九州の大川家具、北海道の旭川家具、飛騨高山家具、静岡家具と並び、広島の府中は日本の主要家具産地として栄えてきた。婚礼家具を運ぶお祝い用のトラックが行き交うのが、ひと昔前の街の風景。多くの地元工場が婚礼ダンスを作るなか、「他者と同じことをしていては生き残れない」と、書棚、サイドボード、机などの洋風家具を製造し、独自のものづくりを心がけてきたのが高橋工芸(たかはしこうげい、広島県府中市)だ。
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その最たるものが、高級クルーザーの内装家具の製造。トヨタ自動車のマリーン事業部からの依頼で製造をスタートし、既に3年、クレームゼロで30艇以上もの納品実績を持つ。今後は1億円以上のクルーザーの内装にも取り組む予定だ。
「特注家具の代名詞になる」という大きな旗を掲げる高橋工芸では、約10年前から東京・青山のオーダー家具専門店「AREA」と提携し、次々とオーダーメイド家具の発注が舞い込む。今では売上全体の7割を占めるまでになった。
国内での安定した受注を受けるなか、新たな市場開拓への投資も続ける、世界にマーケットを広げるため、家具づくりの本場であるドイツ・ケルンメッセに3年連続で出品。2015年には倉本仁さんデザインの飾り棚「Molly」がグッドデザイン賞を受賞。ドイツのステファンディーツ氏ともデザイン契約。さらにオランダのアムステルダムに倉庫を構え、一品でも配送できるように整えた。海外輸出に向けた「世界に通用する府中」ブランドの確立へ歩み続ける。
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地元では、高橋工芸の高橋正美(たかはしまさみ)社長といえば、ちょっとおもしろい存在。自社ギャラリーをつくり、若手芸術家の発表の場にしたり、ライブやイベントを開催したりと、若い人たちにチャンスを与えてくれる。「夢に向かって楽しんで仕事がしたいと思っている」と、新しいことへ次々とチャレンジする高橋さん。社員23人の小さな会社だが、向かうは世界だ。
メイド・イン・ジャパンの技術をつないでいく仕事、家具づくりの現場で世界を目指す人材を求めている。
高橋工芸株式会社
広島県府中市高木町1113
売上高:2億5000万円
従業員数:23人
※ この記事は、広島県府中市「WORK & LIFE GUIDE BOOK 2019-2021」(2018年11月発行)を再編集したものです。